私の35年の運転キャリアの中で一番走ったブランドはBMWです。
片道35キロの通勤、仕事の移動にプライベート…沢山走りました。
本当にお世話になりました。
E28 528、E34 520、E36 320、E36 318is、E36 M3、E46 318、E39 528…個人所有したBMWは7台。
それ以外でも仕事の関係もあり色々と乗らせて頂きました。
私の車(走り)を判断する物差しとなっているのはBMWです。
体に染みついた感覚は離れないものです。
特に有名な走りのバランスにおいては昔からBMWは世界のベンチマークとされていますが、私もそれに異論を唱えるつもりはありません。
車としての機能、実用性を確保した上で、走りのバランスを徹底して追及する姿は長年のBMWのポリシーであり、今の揺るぎないブランドにした個性だと思っています。
私がこのメーカーで一番感心したのは、基本的に全車種にわたり走りの方向性(感覚)が同じであるということです。
わかりやすく言うと3シリーズに乗っても7シリーズに乗っても走りの基本は同じだということです。
もちろん停止した状態から走り出して低中速域、つまり動的な荷重移動がそれぼど働かないところでは、重量がある7シリーズは、そのクラスに相応しい重厚な乗り味でやっぱり7シリーズ…と思うところです。
基本が同じであるというところは、高速域のサーキット走行でもすればわかるところです。
そのバランスのこだわりは目で見えるところでも色々と確認できます。重いバッテリーは、トランク内のリアオーバーハング下部の位置にあったり、一見なんの変哲もないホイールが鍛造でびっくりするくらい軽かったりと…
そこから生まれるハンドリングはとにかく自然であるということに尽きます。
それは自然の摂理を感じるものです。頭と前足で方向のバランスをとり、強靭な後ろ足で地面を蹴って獲物を狙って走り回るネコ科の獣のように…
車両重量のバランスの影響が出やすい環境にすると、5シリーズや7シリーズの走りはその外観からは想像ができない振る舞いを見せます。限界走行に向かえば向かうほどにあの大きなボディがどんどん小さく感じてくる感覚は、なんとも言えない不思議なものです。
私は個人的にこれがBMWだと思っています。
もちろん同じ車種でも搭載されるエンジンによって走りのバランス、味付けはそれぞれありますが、車体のバランス性能は一貫しています。
その走りの運動性能の高さは安全性能にも結び付くものだと考えます。
危険を回避するための操作の対応については、今では様々な走行制御・安全デバイスがありますが、そのデバイスの効力も基本のバランス性能でより生かされるものだと思います。
話はそれますが、GT-Rを設計された水野さんが言われた中でGT-Rは重量を武器に走りの性能に磨きをかけたという話がありましたが、そこの武器にあたる部分は、バランスだと思っています。
重量バランスは、何を求め、どう走るかによっても、その取り方は違ってくるので用途に応じて色々あるところですが、個人的にトータルでの走りのバランスが良いと思うのはFRです。
日本の公道では、その良し悪しを判断する場面は少ないと思いますが、例えば走りを極めたレイアウトで有名なミッドシップなどは、そのバランスから直線の高速域のバランスはフロントエンジン車よりも不安定な方向です。
私もミッドシップ車には2台乗りましたが、フロントは空力でバランスを取っている印象を受けました。
古いメンテナンスが行き届いていないリアエンジンのポルシェ911などは、重いエンジンでリアサスが沈み、まるで水面を走るモーターボートのようで、そうなるとフロントが浮き高速は怖くて走れない状態になります。古い911に乗る友人はスピードリミッターだと笑っていましたが、重量のバランスとはそんな影響が表れるものです。
もう30年以上前の当時の世界最速車イエローバード(最高速340キロ)と言われたルーフのCTRは、リアエンジンの911ベースでしたが、高速域のバランス性能を高めるために911よりもさらに前傾姿勢でした。
車は様々な場面でバランスの良し悪しが出てくると思いますが、総合評価で結論を出すとすれば走りの運動性能のバランスはFRが一つの理想で特にその特性を生かしバランスの適正化にこだわるBMWの走りはとても自然でありハンドルを切るたびに気持ちの良さが伝わるものです。
今私が乗っているA4などは、直線の安定性がBMWよりも感じたりと、メーカーそれぞれにどこにバランス、重きを置くかで違ってくるとは思いますが…
今では時代の流れでBMWも一部FFを採用するようになりましたが、そんなBMWが造るFFの走りのバランスにも興味があるところです。